先日、備陽史探訪の会のバスツアーで、倉敷市真備町周辺を訪ねた。題して「下道氏と金田一耕助に出会う旅」…。

 下道氏は奈良時代、右大臣吉備真備を出した古代豪族で、矢掛から真備町一帯が本貫地。古墳や関連の史跡がたくさん残っている。が、今回は、史跡は二の次、一番関心があったのは、金田一耕助と出会う旅。真備町金田一耕助の生みの親、横溝正史が戦中戦後の一時期、ここで疎開生活を送った場所なのだ。「本陣殺人事件」など、名探偵金田一耕助の活躍を描いた一連の作品はこの地で生まれた。行政や住民が「金田一耕助」を街づくりにどのように利用しているか、だ。
バスツアーはのっけから、他のグループと鉢合わせとなった。井原鉄道の駅にトイレ休憩によると、電車が到着したらしく、リュックを背負った一団がホームから降りてきた。待合室では、黄色いジャンバーを着た地元のガイドさんらしき方がテグスネ引いて待っている。外には地元NPOのマイクロバスが待機中だ。史跡を訪ねても行政の電気自動車が入り口で待っている。次から次へとガイドさんに連れられたグループがやってくる…。
真備町の「金田一耕助の小径」を歩くと、至るところで家族連れや一目で横溝ファンだと分るグループとすれ違う。ミステリーウオークの冊子を片手に歩くと、所々にチェックポイントがあって問題やキーワードが隠されている。冊子にあるハガキに答えを書いて投函すれば、抽選で豪華景品を貰えるらしい。
所々に横溝作品に出てくる場所があって説明板があって謂われを書いてあるが、何処も作品のモデルとなった場所と言うだけで特別なものがあるわけではない。横溝ファンだけが感極まる場所なのだ。
真備町時代から続くこの企画、十分人を惹き付ける魅力ありと見た。歩いてみてもこの企画で町に「お金が落ちる」というものではない。が、「イメージ作り」には十分有効である。
ひるがえって我が福山を見ると、このような文学作品、映画・ドラマを利用した町づくり、イメージアップ戦術がどうも不得手のようだ。
確かに今福山は来年の「竜馬伝」と主演の「福山雅治」をネタに大いに売り出そうとしている。大いに結構なことだが、ドラマが終わった後はどうするのか、「ネタ」は続くのか…。
「ポニョ」と「裁判」で鞆の浦は大盛況、地元民は悲鳴を上げていると言う話題だ。一過性の「話題」だけでこれだけ人が集まるのだ。人が集まれば市長の言う街の「ブランド力」も上がる。福山が舞台となった小説は無いわけではない。内田康夫の「鞆の浦殺人事件」を持ち出すまでもなく、福山は文豪井伏鱒二がいるではないか、先生をもっと利用すべきである。