花粉症、総合的な対策を

花粉症、総合的な対策を
目がかゆい。鼻がつまる、くしゃみが止まらない。熱はないのに、だるい。花粉症の人にとっては、つらく、憂うつな季節が始まった。
環境省が先月末に出した飛散量予測によると、スギ、ヒノキとも一部地域を除いて昨年より多めで、近畿から中、四国にかけては二〜三倍に増えそうだという。飛散が本格化するこれから三、四月にかけて、花粉症の人は外出もままならない。
日本人の五人に一人が花粉症で悩んでいるといわれる。以前は30代から50代の人に多かったが、最近では小中学生や幼児などにも増え、全世代共通の悩みとなった。突然発症する人も多く、「国民病」と言っても過言ではない。
この症状は世界各地で報告されているが、我が国では、1960年代に報告されたブタクサ、カモガヤ、スギ、ヨモギなどによるものが花粉症の始まりだ。しかし、その正確な出現時期は判っていない。
花粉症は異物に対して体が起こす防御反応の一種だ。スギ花粉へのアレルギー反応が最も多いが、ヒノキやイネ科植物に反応する人もいる。季節は春だけと限らず、秋のブタクサなどに激しい症状を示す場合もある。国などの研究機関が免疫療法の開発に努めているが、個人差や副作用などもあり決定的な治療法はまだ開発されていない。
治療費や薬代だけで年に2000億円を超えるとの試算もある。発症すると仕事の能率が下がるなど治療費以外の損失も大きい、治療法の確立は国民的な課題だ。
花粉症対策の関連商品も多く開発されている。新薬、新しい機能性の良いマスク、持ち運び可能な空気清浄器などだ。が、治療法を含め「完全」な対策は不可能なだけに、花粉症の方の悩みは深刻だ。
花粉症の急増は戦後の植林が原因とされる。戦後国土復興事業で、戦争で乱伐された山々にスギ、ヒノキが植えられた。野山には再び「緑」が戻ったが、これらの樹木から出る花粉が国民を襲ったのだ。
国などは花粉の少ない品種の普及を進めている。ヤシャブシなどを伐採し、違う樹種に転換する試みも各地で行われている。だが、全国の数10万ヘクタールに及ぶスギ林、ヒノキ林を伐採し、品種転換を行うなど到底出来ない相談だ。
国内には花粉症以外にも多くのアレルギー疾患がある。幼児や子どものアトピー性皮膚炎もその一種だ。これらの疾患は、いわゆる文明病だ。排ガスの影響や食生活の変化など、さまざまな要因で発症する。環境や食生活の見直しなどの対策を考えていかないと、これらアレルギー疾患を克服するのは難しい。国は早急に予算を投入し、総合的な対策を立てるべきである。