偽書「真瀬中条記」

調査中の中条遍照山城に関して、「真瀬中条記」という偽書が出て困っている。この書、大変な出鱈目で、千葉氏の一族と言う真瀬氏が中条村の地頭であったということが述べられている。しかもその子孫が鵜飼元辰だというから始末が悪い。鵜飼元辰は実在の人物で小早川隆景の寵臣だ。信頼すべき記録には元辰は能役者の倅とある。
この書が偽書である理由はたくさんあるが、最大の理由は真瀬氏が中条にいたという「傍証」が全くないことだ。江戸初期の寛永年間の寺社注進状には、中条の寺社の外護者はほとんど「宮若狭守隆信」とあって真瀬氏の名前はない。中世の支配者は寺社の保護者だ。寺社の記録に現れない権力者は存在しない。
400年間記録に現れないで、現代になって登場するとは如何なることか、偽書には良くあるパターンだ。