事故米事件 「官」「業」に馴れ合いはなかったのか
事故米事件 「官」「業」に馴れ合いはなかったのか
コメの安全に対する信頼を根底から揺るがした事故米の不正転売が、刑事事件に発展し、大阪、福岡、熊本の三府県警が、大阪の「三笠フーズ」の強制捜査に乗り出した。
農薬などで汚染され、工業用になるはずの事故米を政府から安く仕入れ、「食用」と偽って不正に転売する。いままでの産地や消費期限の偽装をはるかに上回る悪質さで、徹底的に真相を明らかにすべだ。
農林水産大臣と事務次官が辞任したが、それで済む話ではない。事故米が売れればいいという安易な姿勢の農水省と、足元を見透かした業者の悪質な転売。三笠フーズの責任追及だけでなく、こうした「官」と「業」の「なれ合い」の構図も明らかにして欲しい。
今回の事件は、ウルグアイ・ラウンド合意により、ミニマムアクセス(最低輸入量)枠として、毎年約七十七万トンの外米を輸入しなければならなくなったのが発端だ。77万トンの中にあったのが、カビや農薬などで食用に適さない事故米だ。保管には費用がかかる。「官」側はできるだけ早く売却したい。大量に購入してくれる三笠フーズは「官」にとってありがたい存在だったのだ。
農水省は三笠フーズに対し、2004年度以降、96回の立ち入り調査を行っている。が、抜き打ちではなく、事前通告だった。「業」側はそれを見越して、上手く転売の手口を隠したり、工業用に加工したようにカモフラージュするなどしてきた。
農水省は売り渡す際、食用に転用されないよう米に着色したり、粉砕したりできたはずだ。国内のカドミウムを含む米にはそうした措置を取ってきた。しかし、汚染米には何の手も加えずに引き渡していた。
「官」側に事故米を処分できればそれでよし、とする意識がなかったのか。「業」側と「あうん」の呼吸で売買していたのではないのか。「官」側の幹部が三笠フーズから接待を受けていた事実もある。癒着とみられても仕方がないだろう。
事故米問題の指揮官は野田消費者行政担当相になったが、今のままでは何も出来ないだろう。米の輸入・流通は農水省の所管、検疫は厚労省の管轄だ。せめて安全検査の権限を内閣府に移し、この問題を来年度発足する予定の消費者庁の試金石とするぐらいの姿勢がほしい。「官業癒着」が疑われる構造を根本的に改めない限り、国民に不利益をもたらす不祥事の根を絶つのは困難だ。