年金記録改ざん、徹底的な調査が必要だ

年金記録改ざん、徹底的な調査が必要だ 社会保険庁職員による新たな年金記録の不正が、明らかになった。今度は保険料記録の改ざんである。問題になったのは、厚生年金支給額の算定基準となる「標準報酬月額」だ。保険料を滞納していた東京都内の会社社長が1995年、社会保険事務所の担当者に標準報酬月額を1年数カ月分さかのぼって低くするよう指導されたという。
 厚生年金の保険料は、当人の収入に応じた標準報酬月額の多寡で決まる。その額を下げれば、会社、社員双方の保険料負担が減って当座は助かるだろうが、その分だけ社員の将来の受給額も下がる。社保事務所側は、こうした“指南”をすれば徴収業績を上げる利点がある。標準報酬月額を低く書き替えれば、見かけ上の滞納額も下がり、徴収率が改善される。今回の職員は、滞納減らしのため「厚生年金からの脱会も促した」と証言している。
 とんでもない話だ。日本中を揺るがした5千万件もの不明年金記録をはじめ、社保庁のずさんな仕事ぶりが次から次に明るみに出たが、今回の記録改ざんを見れば、社保庁の不祥事は底なしというほかない。我々は一体何を信じればいいのか?
 不明年金記録は業務怠慢やミスの積み重ねだったが、今回は故意だ。極めて悪質で、公務員として許し難い。しかも、どうやら今回の不正は組織的だった可能性があると言うから驚きだ。
 こうなると、自分の知らない間に改ざんされ、年金額が減っていないか、だれしも心配になってくる。
 社保庁は、一億数千万件にのぼる厚生年金の全記録を調べ、不審点が見つかった人にまず通知することにしたという。来年にはすべての受給者二千万人に現役時代の標準報酬履歴を送って確認してもらう。当然の対応だが、社保庁側に不正を裏付けるような資料はほとんど残っておらず、確認作業は不明年金記録と同様極めて難しいと聞く。困難だと言っても、庶民の老後の糧である年金への不信感をこれ以上募らせてはだめだ。社保庁は不正をただす徹底的な作業を進めるべきである