農相発言、問われる資質

農相発言、問われる資質
 なんと不見識な発言だろう。太田誠一農相がテレビ番組で、消費者を疎んじるような意見を口にした。NHKの討論番組に出席した太田農相は、食の安全についての対応を問われ、こう語った。
 「日本は潔癖で、国内は心配しなくてもよい」「消費者としての国民がやかましくいろいろ言うと、応えざるを得ない」
 「やかましく」の表現が反発を招いたことを知った農相は、「(消費者が)健全に、正当に自らの権利を主張しているということを言っている」と釈明したが、とてもそうは聞こえなかった。消費者が過剰に安全・安心を言い立てるから…としか受け止めようのない発言だ。
 野党側の「高い目線で消費者を眺めているのではないか」という批判に対して、福田首相は「消費者がやかましいと言うのは、あまり適切な言葉ではないと思う」と述べた。野田聖子・消費者行政担当相は「消費者行政は福田内閣の最重要課題で、意識を高めてほしい」と語った。
 なにしろ、福田内閣が力を注ぐ消費者庁創設の法案は、次の臨時国会で審議される段取りになっている。消費者庁について、民主党はこれまで強硬に反対する構えは見せていない。しかし、消費者をないがしろにするような閣僚発言があった以上、法案審議が順調に進むとは思えない。
 食卓の安心・安全は、消費者の厳しい目があってこそ守られる。そうした消費者の力をどう考えているのか。太田農相はもちろん、消費者が果たす役割について、首相もこの際、きちんと持論を語ってもいたい。
 政治家は言葉が命である。特に閣僚の言葉は内閣の意思を伝えるだけに、持つ意味は大きい。太田農相といえば、五年前にも集団暴行を肯定するかのような発言をして厳しい批判を浴びている。物議を醸す発言が続くようでは、閣僚としての資質に赤信号がともる。それはとりもなおさず、自らの任命責任が問われる事態である。首相はもっとこのことを重く受け止めて欲しい。