暫定税率、総選挙で民意を問え

揮発油税暫定税率が遂に期限切れを迎えた。翌日の4月1日、各地のガソリンスタンドではさまざまな悲喜劇が展開されたが、半月たった今(4月15日)は、騒ぎも一応収まったようである。
この件に関して福田首相は「国民に深くお詫びをする」と頭を下げたが、何をお詫びするのだろうか?道路特定財源の執行が遅れたため、各地の自治体で道路工事の予定が相次いでキャンセルされ、関係者にお詫びをするということだろうか?
国民はガソリンの値下げに大喜びである。ニュースでは事業者等が買い控え、買いだめなどの対応策を取っているという。
そもそもこの「暫定税率」は35年間、「5年」「10年」の期限を切って「暫定」を繰り返してきたものであった。今まではそれでうまく行った。原油は安く25円を上乗せしても、国民はそれほど「負担」を感じなかった。
ところがこのところの「原油高」だ、1バレル100ドルの大台を越えて、下がる気配はない。おそらく原油価格はこのまま推移するであろう。こうなると国民の負担感は増し、運輸業者もこの税率に怨嗟の目を向けるのは当然だろう。しかも、昨今の報道でガソリン税がもとの「道路特定財源」のでたらめな使い道が明らかにされた。国民が怒るのは当たり前だ。
この事態に対し、福田首相衆議院で再議決して、暫定税率を復活させると言明した。
私はこの首相の発言に憤りを感じる。現在与党は衆議院で3分の2以上の議席を占めており、憲法に規定された衆議院の優越を盾に取れば、何事も可能な状況である。しかし、税など国民に負担を強いる場合は、まず、総選挙を行って「民意を問う」べきである。
そもそも現代の「議会」の起源は、ヨーロッパ近代の民主政治がもとであり、それは「税金を負担する者」が「その使い道を監視する」という原則から生まれたものであった。また、この原則は、ヨーロッパの絶対王政の中で、国王の恣意的な税金の徴収を制限することから誕生したものだ。
この民主主義の基本的なルールからすると、国民に新たな負担を強いる場合には、政府はその理由を明確に示し、議会を解散して「民意」を問わなければならない。今回の場合、一度下がった税率を「暫定」とは言え、「引き上げる」わけだから国民の同意が必要である。総理大臣が謝れば済むという問題ではない。「暫定」というあいまいな言葉で何十年も「既得権」として使い放題で来た国土交通省の体質も問われなければならない。
総理大臣に期待したいのは「謝罪」ではなく、「解散権」の行使である。それが出来ないならば潔く辞任すべきであろう。(ビジネス情報、田口義之「話題を追う」より)